飲食店の勤怠管理システムで必要な機能とは
勤怠管理システムは業種によって求められる機能要件が異なります。
一般的なオフィスでの勤怠管理は社員中心の管理となり、勤務形態も定時勤務であることが多いのですが、店舗を構えるサービス業などでは管理の対象はアルバイト中心であり、勤務も曜日や時間が固定でないシフト制の勤務であることが多いと思われます。
特に飲食店は他のサービス業に比べても、1店舗あたりのアルバイトの人数が多い業種です。正社員の比率が低いだけに社員にのしかかる事務的な業務負担が大きくなりがちな業種であります。
サービス業全般に言えることですが、事務作業やバックオフィス業務は業務の効率化を推進し、社員に負担のかからない仕組みづくりを進め、本業に専念させたいという企業が増えています。
シフト制のアルバイトの勤怠管理
シフト制の勤務の場合、時給制のアルバイトの勤怠管理における課題は、まず第一に煩雑な時給計算を効率化したいという課題があります。
タイムカードの日別の出勤・退勤の時刻から勤務時間を算出し、そこから休憩時間を控除します。
このとき丸め処理とよぶ、時刻の切り捨て・切り上げを行うことも多いでしょう。
労働基準法では給与計算は1分単位で計算しなさいと定められていますが、現実問題として端数処理の面倒な1分単位の計算よりも、15分単位で計算しているお店のほうが今でも圧倒的に多いようです。
その後、1か月の勤務時間を集計し、総勤務時間に時給をかけて給与の支給額を算出します。
これだけで済むのであれば、たいしたことではないのですが、同じアルバイトでも勤務時間帯によって時給が異なるとなると、時間帯別に勤務時間を算出しなければなりません。
22時以降は25%の割増賃金を支払うことが法律でも定められており、深夜割増の時給計算のために22時以前と22時以降で分けて時間計算する飲食店も多い事でしょう。
シフト制の勤務の場合、アルバイトの勤務時間は全員が一律で同じではありません。勤務時間が5時間のアルバイトもいれば、8時間のアルバイトもいます。勤務時間が異なれば休憩時間の長さも異なります。
8時間勤務したら1時間の休憩といったように、休憩時間を勤務時間の長さに応じてパターン化して控除する方法もあれば、休憩時間をタイムレコーダーで打刻させて休憩時間をきっちり打刻時間で計算する方法もあります。
シフト制の社員の勤怠管理
飲食店の社員の場合は、また少し勝手が違います。
タイムレコーダーで打刻はさせる点は同じですが、勤務時間を集計する目的の中心となるのは、残業時間の算出です。
残業時間の計算方法も飲食店のようなサービス業は、一般的なオフィスで働く社員とは異なります。
基本はシフト制のため、定時というものがありません。昨日は12時に出勤したけど、今日は17時に出勤といった感じで勤務時間が固定化されていないのです。
したがって、残業の計算方法も17時以降の勤務は残業として時間を集計するといった方法ではなく、1か月、1週間、1日のそれぞれの規定時間を超過した分の勤務を残業時間として集計するのです。
いわゆる変形労働時間制という運用方法です。
変形労働時間制は、本来の正しい運用方法は、あらかじめ決めていたシフトの勤務時間を超過した場合は、その超過分も残業時間として計算することになっています。
たとえば、シフトでは12時から19時までの勤務だった場合、実際の勤務は11時から20時だったとすると、シフトの退勤時刻を1時間超過しているため、1時間の残業ということになります。
しかしながら、現場を知っている人ならわかると思いますが、アルバイトの欠員や、急なイベントなどシフトは常に流動的であり、シフトの当日の変更および当日まで確定できないことなど日常茶飯事であり、シフトをもとにした残業計算など誰が運用できるのか疑問の多い制度ではあります。
多くの飲食店企業では、変形労働時間制を採用していても1か月、1週間、1日のそれぞれの規定時間超過しか残業計算しておらず、シフトからの残業計算はできていないようです。
残業計算は非常に事務作業が煩雑化するため、それならば残業をしないようにしたほうがましだということで、残業できない仕組みづくりを推進する企業も最近は増えております。
ヘルプ勤務の管理
飲食店は、多店舗展開することで企業として成長させる業種ともいえます。
複数店舗を展開する飲食企業の場合、人手が足りないときに店舗間でスタッフを融通しあうことは多々あります。
ヘルプ勤務と呼ばれるこの運用、勤怠管理においては結構煩雑になります。
紙のタイムカードによる運用の場合は、ヘルプ勤務の際にタイムカードを店舗ごとに分けて運用することになり、同じスタッフのタイムカードが複数枚存在することになってしまいます。給与計算の際にはこれを名寄せして集計しなければいけません。
計算ミスも起こりやすく、事務作業の負担が大きくなる要因の一つではあります。
WEBの勤怠管理システムを利用することで、ヘルプ勤務も一元管理できるようになるため、最近ではクラウドの勤怠管理システムを利用する飲食店企業が増えています。
まかないの管理
飲食店ではまかないを福利厚生として無料で提供するところが多いイメージはあります。個人商店にはそういった運用は多いかもしれませんが、多店舗展開する飲食企業では、まかないは給与から控除する運用をされていることが多いようです。
おそらくは、まかないを無料化してしまうと、不正や横領につながるきっかけになりやすいからでもあるのでしょう。
飲食店では、まかない回数や金額を管理する仕組みが勤怠管理システムに求められることが多いようです。
また、ユニフォームのクリーニングも同様に控除対象となる企業もありますが、こちらもまかない同様の運用になります。
不正防止の管理
シフト制においては常時、店長がいることがないため、店長のいないときに不正が行われないよう気にかける企業は多いようです。
たとえば、遅刻しそうだから代わりに打刻しておいてと電話で他のアルバイトに依頼するという不正です。
不正を行えない仕組みとして、生体認証を搭載した勤怠管理システムを導入するのが最近のトレンドではあります。
飲食業においては、現金管理と勤怠管理で不正が一切ないほうが逆に珍しいといっても過言ではありません。
いやいやウチに限っては大丈夫と思っても、気づいていないだけのことは多いです。
数年飲食店をやれば、必ず不正に遭遇します。
飲食店でよく利用されている勤怠管理システムは?
結局どの勤怠管理システムが良いの?という質問には、企業のステージに合わせて選びましょうというのが今のところの最適解ではないかと考えます。
開業したてのころ、もしくは開業前においては、運用や事業展開の方向性も定まっていません。
このころにガッツリと高機能な勤怠管理システムを導入しようとすると、ただでさえ仕事が多い持期だけに導入準備にリソースを割けず、システムを活用しきれません。
また、資金繰りにも余裕のある時期ではないでしょうから、システムへ投資するよりは他のことに使う、もしくはプールするほうが賢明かと思われます。
この時期はPochikinのようなシンプルでコストのかからない勤怠管理システムがおすすめです。
4店舗ぐらい展開するようになったら、そろそろ高機能な勤怠管理システムを導入する時期かもしれません。
飲食業ではクラウドの勤怠管理システムが良いでしょう。
キングオブタイム(ヒューマンテクノロジーズ)やジョブカン(ドーナツ)のようにユーザー数の多いクラウドサービスのほうが機能が豊富です。
飲食業の場合は、勤怠管理システムのみを導入するよりも、売上管理とセットになっている業種特化型ソリューションに内包された勤怠管理システムを利用することも多いようです。
フーディングワークス(東芝TEC)、ビストロメイト(日立システムズ)などが有名です。
勤怠専門ソリューションと業務特化型ソリューションでは勤怠管理システムとして機能差はさほどないので、FLコストや損益計算書が自動で生成される分、業務特化型のソリューションのほうがおすすめです。